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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)797号 判決

主文

原判決を破棄する。

本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理由

上告人兼上告代理人等の上告理由は末尾添附別紙記載のとおりである。

よつて案ずるに原審は本件において上告人等が引受無効を主張する新株の数は五千九百五十株でありそして本件会社の増資前の資本の総額は金二十五万円(一株の金額は金五十円株式総数は五千株)であつたところ本件増資に際して増加した資本の額は金七十五万円(一株の金額は五十円その株式数は一万五千株)であるから前記残株五千九百五十株はこの増資にかかる株式数一万五千株の約四割弱、増資後の総株式数二万株の約三割弱に該りしかも増資前の会社の株式総数に超過する株式であるから、かかる多数の株式が引受無効となる結果生ずるところのその部分の引受の欠缺は必然的に会社資本の鞏固を害し且資本増加の目的達成を妨げるものとして増資そのものの無効を来すものであるとし、これを前提として増資そのものの無効を主張せずして引受の無効を主張することは許されないものであるとして上告人の本訴請求を排斥したものであることは判文上明かである。しかし原判文の様な引受無効があつたからといつて必ずしも必然的に会社資本の鞏固を害し且資本増加の目的達成を妨げるものとして増資そのものの無効を来すものとは限らない。

特別の事情なき限り取締役の引受払込により増資の目的を達し得るものと見るのが相当である。此点において原判決は法律の適用を誤りたる違法あり、此違法が主文に影響を及ぼす可能性あること勿論なるを以てその他の論旨に対する判断をするまでもなく上告を理由ありとし民訴第四〇七条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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